10月後半ともいうのに、Tシャツで過ごせる気候。家を出たのが夕方だったので、少しは寒いかとジャンバーを羽織って出たが、歩いている途中で、汗ばみ始め、脱いで、トートバックの中へ。最寄駅の久我山まで、住処からは17分かかるので、夏も冬も辛い。今頃がちょうどいい季節のはずだが、ここ数年、春と秋が短いので、まだ夏の服装で十分だ。そんな夏のような気候だが、向かったのはおでん屋。一年通して、おでんを出している、西荻窪にある老舗「千鳥」へ向かう。
1955年創業。おそらく西荻最古の居酒屋ではないだろうか?(未確認)。現在は、創業者のもとでアルバイトをしていた方が受け継いで経営。店内は若い方々が切り盛りしているので、初めてきた方々は、そんなに老舗の居酒屋だとは思わないかもしれない。しかし、年季の入ったコの字カウンターは、圧倒的にノスタルジックな空間だ。
さて開店前前、すでに10人ほどの列。年金受給してそうな紳士が、列をなす。幕開けは17時。重鎮たちが、いつもの席に座るために並び始めるのだ。とはいえ、入店の際は店の人に、指示されて座るので、必ずしも好きな席に座れるわけではない。しかし頑固な年金爺さんは、そんなこと無視して、ズンズン進み、己の好きな席へと向かう。おでん屋なので、おでんがうまいのは当たり前だが、ここは魚も美味い。主人が毎日、豊洲まで仕入れに行っているそうだ。私が好きなのは、山かけだ。新鮮なマグロの赤みが、山かけの下にたっぷり潜んでいる。750円。お値打なのかは微妙な値段だが、まあ許せる。赤星(サッポロ)と山かけ。最高の取り合わせだが、山かけが出る頃には、もう赤星は飲み干し、ウーロンハイに移っている。ここは厨房を2人でやってるので、料理が出てくるのは、遅いのがちょっと難点なのだ。
しかし、そんなことを解決してくれるのが、おでんなのである。おでんは、カウンター中にいるお嬢さんたちに注文すれば、すぐに出てくる。おでんを二つ三つほどつまみながら、魚やツマミを待つ。それがこの店での流儀。コの字のカウンターで、しっぽりと、おでん、つまみそして新鮮な魚なのだ。
店のテレビでは西田敏行さんの葬儀のニュースが放送されてた。西田敏行さんの代表作「池中玄太80キロ」放送の4年前にすごいドラマがあった。1976年。森繁久彌主演「三男三女婿1匹」(TBS)だ。そこに出演していたのが当時無名の俳優、西田敏行さんだった。子供ながら、あまりの自由奔放な演技、アドリブなのかよくわからないような泉ピン子との掛け合いに、びっくり仰天しながらみた覚えがある。西田敏行さんの死にあたって、泉ピン子さんのインタビュー記事を書いた朝日新聞以外、どこもこのドラマのことを取り上げていない。森繁さんは「僕の出番減らしてもいいから、2人の出番増やしてくれ。2人は売れるから」と言ったそうだ。TBS様、是非再放送希望!